○ 森の断面の調査について

・ 葉が落ちる前に森の断面を記録しませんか,鳥の生息環境として森の把握に不可欠だと思います.

どのような方法が良いのかわかりませんが,たとえば,調査ラインを決めて,水平,高さ1 mごとに葉の有無を方眼紙に記録していく.12 mの計測用の竿を持っています.もうひとつ.樹木に番号札がついていると昆虫の記録に便利なのですが,ついでに胸高直径を記録しておけます.

 森の断面の調査の目的ですが,最近の行政の姿勢として,公園で見られる鳥の種類が増えることを歓迎しています.東京ではかなり前から多くの都立公園に鳥のサンクチュアリが設けられていましたが,大阪府内では南港野鳥園と万博公園だけではないかと思います.ところが,大阪市でも建設予定の「熱帯鳥かご」に対する野鳥の会の反対行動もあってか,鶴見緑地などにも多様な生き物が住めるようにすることを方針としてかかげ始めました.まだ,チョウに対しては必要性を感じていないようですが,行政として鳥は最も受け入れやすい対象のようです.

樋口さんや私をはじめ多くの研究結果などから明らかなように,都市緑地に生息する鳥の種数の大部分は樹林面積で説明できます.他に緑地周辺の環境やソースからの距離なども影響しています.しかし,既存の都市の中で大きな面積の樹林を創るのはかなり困難だし,地域全体の緑被率を上げるのも大変です.そこで,それ以外のところで,改良できる方法があるなら示したいというのが私の気持ちです.

そのひとつとして,森の形や垂直構造について検討したいのです.階層別に種の優占度等を記載する植物社会学的な方法でなく,ランドスケープ エコロジー的な記載の方法を探しています.これは鳥だけでなく,いろいろな小動物の生息環境の記載方法として意味があると思っています. (by 夏原)

・ 夏原さんのいっているのは,マッカーサーの森林断面と鳥類の多様度のことを想定しているのでしょうか?葉層多様度と鳥の種多様度と高い相関があるっていう,例の有名な論文ですよね。 (by 島田)

MacAther, R, H. and MacArhter, J, W. (1961): On bird species diversity.

Ecology, 42: 594-598. 

○ 6月27日、7月19日 昆虫調査の結果 (by 夏原)

 6月27日と7月19日に昆虫の調査をおこないました.落とし穴トラップで捕らえた昆虫は未整理です.

6月27日に観察した昆虫

・シオカラトンボ・ウスバキトンボ・アオモンイトトンボ・ショウジョウトンボ・コシアキトンボ・アキアカネ

マユタテアカネ

・シバスズ・マダラスズ

・ナナホシテントウ・ナミテントウ・ダンダラテントウ・ヒメカメノコテントウ

・アゲハ・アオスジアゲハ・ツバメシジミ・ヤマトシジミ・ルリシジミ・ツマグロヒョウモン

マエアカスカシノメイガ

・アオメムシヒキ・アメリカジガバチ

・コアオハナムグリ

7月19日に観察した昆虫

・シバスズ・マダラスズ・セスジツユムシ・ショウリョウバッタ

・アオモンイトトンボ・キイトトンボ・シオカラトンボ・ショウジョウトンボ・ウスバキトンボ・ノシメトンボ

マユタテアカネ・アキアカネ

・クマゼミ・ニイニイゼミ・ツツジグンバイ・イトカメムシ・地表性の捕食性カメムシの幼虫

・アゲハ・アオスジアゲハ・ツバメシジミ

・ナナホシテントウ・ドウガネブイブイ

・アオメムシヒキ

・セグロアシナガバチ・フタモンアシナガバチ・コハナバチの仲間

・タマムシ

 羽が1枚落ちていただけですが,羽だけが飛んでくることはないので,数日前には生きていたのだと思います.幼虫はサクラとかエノキの大木の枯れ枝で成長します.いのちの森へは成虫が飛んできたのか,積み上げてある丸太に幼虫がいたのか,大きなエノキかケヤキにいたのか,いずれかでしょう.来年もみつかるようなら,いのちの森のシンボルのひとつに加えてはいかがでしょうか.

○ 7月21日 きのこ調査の結果 (by 下野)

 7月21日(月)午後2時より午後4時30分,命の森のきのこの調査を行いました.

参加者2名 小林久泰 下野義人

 柔らかいきのこはヒメカタショウロ,オオワライタケ,およびツノマタタケの3種だけでしたが,硬いきのこが多く発生していました.とくに,赤いヒイロタケが園内の至る所の倒木から発生していました.植物班の人も是非見て下さい.一番綺麗なのは昨年ツキヨタケがでていた近くの倒木です.

 ヒメカタショウロは命の森の入り口の左側のアラカシ,シイ,シラカシの根元約1.5m程の所に円形に多数発生していました.来年度はその場所より外側からでるのでしょうか.論文の報告通り植物を移植した後すぐに発生するきのこです.その後には報告の通りキツネタケ等がでるのでしょうか.楽しみです.

 本日,新たに発生を確認した種は,オオワライタケ,アラゲカワキタケ,ツノマタタケ,変形菌のキフシススホコリ,チャカイガラタケ,および黒いカワラタケです.キフシススホコリは2箇所にありました.

 7月21日に確認したきのこ

 1.オオワライタケ

 2.ヒメカタショウロ

 3.カワラタケ(褐色系)

 4.カワラタケ(黒色系)

 5.カワウソタケ

 6.オオチリメンタケ

 7.クジラタケ

 8.ヤケイロタケ

 9.ヒイロタケ

10.チャカイガラタケ

11.アラゲキクラゲ(乾燥標本,いいものが残っている)

12.コフキサルノコシカケ(前のもの,大きくなっている)

13.アラゲカワキタケ

14.ツノマタタケ

15.キフシススホコリ

本日調査をして,一つ研究材料を見つけました.命の森にかなり多くの硬質菌が確実に発生することが分かりましたので,園内の倒木に番号を打って,その木からどのようなきのこが発生するかを調べたいということです.柔らかいきのこの遷移を知るには,時間がかかりますが(少なくとも10年以上),倒木に発生する硬質菌の場合は今までの調査から考えると短いようです,2,3年で結果がでると思います.とくに,ツキヨタケの発生した木では樹種も分かりましたので,是非この仕事を行いたいと思っています.全部の倒木は無理ですが,できるだけ多くの木について番号を打ちたいと思います.そうすれば誰でも調査できます.昨年ツキヨタケがでていた木から,クジラタケが1個でていました.

○ 7月30日 日射量調査の結果

●6/26-7/30の35日間、日射量の測定をしました。

 1週間あたりに換算しています。

設置場所 SR(MJ/m2/week) RSR(%)

落葉1 56.22 51.1

落葉2 60.12 54.6

常緑1 40.92 37.2

常緑2 49.87 45.3

草地(オープン) 110.10 100.0